小泉純一郎首相の政務秘書・飯島勲氏は、混迷した外務省人事決着直前の八月二日、記者を集めて田中真紀子外相の更迭を平然と口にした。「総理の指示を守れないのなら外相が任命権者であっても仕方ない」 こうした発言をするのは官房長官クラスと相場が決まっていただけに、黒衣である飯島氏の剛腕ぶりを浮き彫りにした格好だ。 飯島氏は小泉氏より四歳下の五十五歳。田中内閣が発足した昭和四十七年の初当選から小泉首相の秘書をしている。六年前にペンネームで出した本を、首相秘書になるや『代議士秘書』と改題して再出版、ベストセラーにした。それだけでも「黒衣」とは言い難いのに、今回の出来事は分身の域を超えた影響力を持っていることを実証した。 裏情報に強く、その風貌から「永田町の許永中」との陰口も聞かれる飯島氏。テレビ利用に習熟し、小泉旋風の演出者であることは永田町では知らぬ人はいない。外相の更迭を口にする一方で夫の田中直紀参院議員とは水面下で接触するしたたかさも見せた。だが、永田町には「秘書が表に出るのは不吉の前兆」といったジンクスがあるだけに、やりすぎれば上手の手から水が漏れることになりかねない。

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