産経新聞が九月一日付から駅売りなど店頭販売の小売価格を百十円から百円に値下げしたことが、新聞業界に大きな衝撃を与えている。日本では新聞の値下げは過去にほとんど例がないからだ。新聞各社の経営陣は「ハンバーガー、牛丼などの価格破壊がついに新聞に及び始めた」と警戒心を強めている。 欧米では九〇年代初頭に英国でデイリーミラー、サンなど朝刊タブロイド紙が値下げ競争を展開、タイムズ、デイリーテレグラフなど一般紙はもちろん経済紙のフィナンシャルタイムズまで値下げに追い込まれた歴史がある。その後も欧米ではフリーペーパー(無料紙)の登場などで新聞価格の低下が進んでいる。日本だけが、事実上の独占状態のもとに、値上げと価格維持を果たしてきた。 だが産経の動きに「毎日新聞、東京新聞の追随値下げは必至」と業界関係者はみており、日本も本格的な値下げ時代に突入しそうな気配。このところ、拡販のための景品競争は沈静化していたが、これも再燃しかねない状況だ。新聞各社は景気の悪化で広告収入が急激に減少しており、追い打ちをかける値下げ競争は戦後初の新聞業界再編のきっかけになるとの見方も出ている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。