飲料水など水資源の大半を隣国マレーシアからの供給に頼っているシンガポールのリー・クアンユー上級相(前首相)が、クアラルンプールでマレーシアのマハティール首相と会談し、二〇一一年と二〇六一年に期限が切れる水供給協定の更新を早々と決めた。 更新に際しては、料金の大幅引き上げにも合意し、今世紀中の水不足問題を解消したともいえる。 シンガポールはなぜ、この時期にまだ期限の残る水供給協定更新を急いだのか。二〇〇四年の総選挙を目処にマハティール首相が政界引退を考えていることと、与党連合の中核をなす統一マレー国民組織(UMNO)内でのマハティール首相の指導力低下が背景にあると見られる。 シンガポールはこれまでも両国間で経済、社会問題が表面化する度にマレーシアから「シンガポールへの水供給を絶て」という強硬論が出ることに怯えてきた。 マレーシアでは、九八年にアンワル副首相兼蔵相が解任・逮捕されて以降、ポスト・マハティールの有力者が存在しない。今後、政局混乱が予想されるだけに、ベテラン政治家リー上級相は、生命線の水だけは守り通したいと考えたようだ。

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