日本では小泉首相の靖国参拝問題が大きな関心を呼んだこの八月、中東は血なまぐさく重苦しい夏だった。 恐らくは七月末のイスラエル軍のパレスチナ過激派に対する暗殺作戦への報復としてであろう、八月九日、エルサレム中心部のピザ・レストランで昼食時に自爆テロがおこり十八人が死亡、九十人以上が負傷した。イスラエル軍はただちに報復、東エルサレムにあるパレスチナ解放機構(PLO)事務所「オリエントハウス」を閉鎖し、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェニンの中心部に戦車部隊を侵入させた。 八月二十七日には、イスラエル軍武装ヘリコプターが、パレスチナ自治区ラマラにあるPLO反主流派で過激派のパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の事務所を攻撃、アブアリ・ムスタファ議長が殺害された。これに報復するパレスチナ武装勢力の攻撃がおこり、さらにこれに対してイスラエル軍がパレスチナ自治区ベイトジャラに侵攻するなど、緊張はエスカレートしていった。その後、イスラエル軍はベイトジャラからは撤退したが、依然として緊張が続いている。批判される二人のリーダー 八月九日の自爆テロについては、『ニューヨーク・タイムズ』紙社説は、イスラエルがただちに、オリエントハウスを含むパレスチナ勢力の拠点に報復したのは、「理解できる」としたうえで、これでは状況は鎮静化はしないだろうと見ていた(“Mideast Maelstrom”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、八月十三日)。『ワシントン・ポスト』紙はより直截にイスラエル国民への同情を表明した。「アリエル・シャロン首相の政策をどう評価するにせよ(実際、われわれは彼の入植凍結拒否とパレスチナ過激派への暗殺作戦を批判してきたのだが)、子供を含む一般市民を意図的にテロ攻撃の標的にするというのは全く別のことだ。これは、いかなる国でも許容することのできない野蛮行為である。当日の晩、イスラエルが報復のため断固とした意図を示したのは完全に正当だ」と評価した(“Outrage in Israel”IHT、八月十一―十二日)。

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