「シムピューター」開発の哲学

執筆者:サリル・トリパシー2001年9月号

インド辺境農民も使える200ドルパソコンの夢[ロンドン発]田舎農民に、インターネットが何の役に立つ?――途上国の農民を、「厳しい気象条件の中で荒地を耕し、時代遅れの生活を送る野蛮人」と思いこんでいる先進国の技術者は、そんな言い方をする。だがインドの科学者たちは、そうは考えなかった。 安価な携帯コンピューター「シムピューター」の開発に当たるインド人技術者たちは、インターネットを通じて気象情報や農業関連ニュース、作物の市場価格を知ることができれば、インド辺境の農民たちの生活を大きく向上させられると考えたのだ。 翌週の天候が予測できれば、収穫計画を立てやすくなる。またネットを使えば、種苗や肥料を買うための資金融資の相談をするために遠くの銀行まで出かけていかなくてもいいだろうし、遠く離れた家族への仕送りも簡単で確実になる。また、じゃがいもや玉葱の相場がわかれば、仲買人に買いたたかれることもなく正当な価格で作物を売ることができるようになるし、ネットで教育の機会も得られるだろう。 田舎農民にインターネットは必要ないというのは、彼らを情報過疎地に放置しろと論じるに等しい。もちろん、インドの農民には情報よりもはるかに切迫したニーズがあることもまた事実。飲み水や病院の不足、電気の普及の後れなど、問題は山ほどある。しかし、だからといって、情報がいらないという理屈にはならないはずだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。