賃貸オフィスビルなどを運用対象とする不動産投資信託(J-REIT=日本版リート)が九月十日、初めて東京証券取引所に上場した。配当予想利回りで四%台という、低金利時代としては期待の商品だけに、熱い視線を送る投資家は多いが、不動産業界の中で先陣を切って投信の上場にこぎ着けた三井不動産と三菱地所もまた別の意味でこの金融商品の成否に気を揉んでいる。自社の手がけたリートの成績次第で、両社トップのメンツが左右されかねないからだ。 九八年六月から三井不動産の社長を務めている岩沙弘道氏(五九)は、業界では知る人ぞ知る不動産証券化の第一人者。「日本版リートのために社長になった」と評する向きもあるほどだ。米国流の不動産証券化スキームに精通しているうえ、長年、再開発事業の担当部門に籍を置き、都心部のリート適合物件をきめ細かく把握しているという。三井不動産にとって日本版リートは決して負けられない勝負なのだ。 一方、リートでは三井不動産に比べ若干、準備が遅れていた三菱地所。上場ではなんとか同着に持ち込んだが、負けられないという事情はこちらも同じ。今年四月に就任した高木茂社長(六二)は証券化部門での経験はほとんどないものの、ビル部門、とくに丸の内開発の企画に携わってきた。その開発資金の調達を左右するオフィスビルの証券化、なかんずくリートでは取りこぼせないと同社幹部は指摘する。

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