アメリカよ――「Dデイのない戦い」

執筆者:船橋洋一2001年10月号

ユーラシアへの関与、同盟の再定義、民族主義や世俗イスラムとの連携など、いくつもの課題が米国を待つ。これから始まる「本当の戦い」において、ブッシュ大統領に求められるのは米国の多様性と自由の維持だ。 米国と英国のアフガニスタン空爆によってアル・カエダとタリバンに対する対テロ戦争が始まった。 ラムズフェルド国防長官は「この戦争に、Dデイはない」と言った。いつまでに終えるというデッドラインはない。持久戦である。 長官は「冷戦が、同盟国とともに不断に圧力を相手にかけ続け、熱戦なしに最後は相手が内圧で崩壊したような形」でこの戦いは終わるだろうとの出口戦略イメージを語っている。つまりは、新たな封じ込め戦略である。 ブッシュ政権はアラブ、イスラムの国々も含む多国籍協力の枠組みを維持しようと必死である。テロ作戦の名前は、当初の「Infinite Justice(限りない正義)」から「Enduring Freedom(不朽の自由)」へと変わった。前者が正義の戦い、つまり聖戦の語感を帯びており、アラブ諸国をはじめイスラム社会の反発を買いかねないことを懸念したためだ。 米国は今度の多国籍協力の枠組みを「諸国間の変動連合(floating coalition)」と形容している。それは「つねに動き、進化する」性格となるだろうと見る。

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