空前のテロが米国主導の秩序を揺るがしている。市場経済の危機は一九三〇年代を想起させるほどに高まった。だが、それでも日本には、これまで積み残してきた課題を一つずつ処理する以外に選択肢はない。 日本時間十月八日未明、米英軍がアフガニスタンのタリバンに対して戦端を開いた。九月十一日(火曜日)の米同時多発テロを受けて、満を持しての戦闘開始である。戦局は予断を許さないが、ひとつだけは確実に言える。二十一世紀最初の年の「暗黒の火曜日」が、まさに既存の世界秩序を根底から揺るがしているということだ。「巨大なビルが破壊され、米国民は北から南まで、東から西まで恐怖に戦いている。米国民が味わっている恐怖は、これまで我々が味わってきた恐怖の報復である」。米英軍の攻撃開始後、カタールの衛星放送が流したビデオ演説で、オサマ・ビン・ラディンは自らの犯行を認めるかのようにこう言った。「クルセード(十字軍)対ジハード(聖戦)」――。ブッシュ米大統領の口を思わず衝いて出た一言とテロリストの理屈を結びつけた、扇情的な図式が氾濫している。日頃は宗教問題に関心の薄い日本のメディアにもイスラム原理主義についての解説が溢れ、タリバンやオマル師、ビン・ラディンが登場しない日はない。

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