見事なまでに早かったフランスの反応

執筆者:西川恵2001年10月号

 米国の同時多発テロ発生後、反テロ包囲網結成に向けた外交で、フランスの動きは際立っていた。 テロが起きた九月十一日、シラク大統領はブルターニュ地方のレンヌ市を視察中だった。第一報を聞くや、その場で同行記者を前に「フランスは今、大きな動揺とともに、米国を襲った非道なテロについて知った。フランス国民は皆、米国民とともにある」と緊急声明を発表した。発生から一時間半、各国の中で最も早かった。その夜、エリゼ宮からテレビを通じ国民に演説し、「米国て起きたことは、我々にいつでも起こり得る」と、テロとの戦いでフランスが積極的な役割を果たすことに理解を求めた。 十八日、同大統領は各国首脳のなかで先頭を切ってワシントンに飛び、ブッシュ大統領と会談した。「史上かつてない悲劇にフランスがどう感じているか伝えるためにやってきた。フランスは全面的に米国と連帯し、悪そのものであるテロと戦う」と伝えると、ブッシュ大統領は「この戦いには自由を愛するフランスのような仲間が必要だ」と応じた。翌十九日、ニューヨークを訪れたシラク大統領はアナン国連事務総長と会談。その後、世界貿易センタービルの崩壊現場を視察し、花束をささげ「米国民の悲劇は我々の悲劇でもある」と流暢な英語でスピーチした。

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