シリコンバレーからの「長い手紙」

執筆者:梅田望夫2001年10月号

テロ事件の衝撃は“起業の聖地”に大きく影を落している。シリコンバレーから発信を続ける筆者が“九月十一日以後”の日本とアメリカを洞察する。[パロアルト発]こんな長い四週間はこれまでになかった。九月十一日の衝撃は未だ冷めやらない。むしろ日が経ち、省察を深めていくにつれて、そのインパクトの巨大さと歴史の不可逆性に愕然とする。本稿では、私の心の中がこの四週間にどう揺れ動いたのかを、できるだけ正直にたどってみたい。日本への苛立ち はじめの一週間、私は日本に対して憤り続けていた。特定の個人以外に対してこんなに激しい怒りを覚えたのは、生まれてはじめてだった。 シラクがブレアがアラファトがプーチンが、大量市民殺戮テロという惨事に直面したアメリカ人に対して次々と力強いメッセージを発する中、日本はいったい何をやっているんだ、そう思ったのが「怒りの連鎖」の発端だった。日本のマスメディアが「邦人の安否」ばかり報道しているらしいこと。これほどの有事においてすら日本の政治がまったく機能しないこと。当事者意識と戦略性を欠いた暴論、愚論の類が、政治家や学者や評論家やジャーナリストから垂れ流されていること。企業トップの危機認識が甘いこと。気持ちが悪くなるほど淡々と仕事をしている日本人ビジネスマンが少なくないこと。

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