「内なるテロの炎」に脅える中国

執筆者:藤田洋毅2001年10月号

新疆ウイグル・チベット両自治区の分離問題を抱える中国にとって、テロは対岸の火事ではない。だが、この機に乗じて二つの自治区や台湾の問題を片付けようという虫のいい動きも……。「会議期間中はなるべく外出しないよう市民に呼びかけています。米国の事件は他人事ではないですから」――中国共産党中央の幹部はいう。十月二十日、二十一日の両日、上海で開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議を控え、党中央・国務院は上海市当局に「絶対的な安全の確保」を指示した。市政府は、閣僚会議の始まる十七日から終了までの五日間を特別休暇とし、すべての政府機関・企業・学校は休み、会場となる浦東科技城付近の地下鉄駅は完全封鎖、列車はノンストップ、付近のビルは立入り禁止、会場方面へ通じる散歩道も閉鎖……などの対策を打ち出した。 市内の全ホテルにも十六日から二十一日まで「宿泊料金のディスカウント厳禁」を通達、国内の旅行客を実質的に締め出している。いうまでもなく、各国首脳の宿泊先は厳戒態勢だ。小泉首相が投宿する日系の花園飯店は、すでに十二日から出入口を一カ所とし、入館者の持物・身体検査をしている。 上海市のビジネスセンターである浦東一帯の交通機関は麻痺、市内全域の交通規制も格段に強化された。

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