アラブの被害感情を刺激する「アフガン空爆」

執筆者:内田優香2001年10月号

 米国で同時多発テロが発生して以来、クウェイトで多くの人にこの大惨事の感想を聞いた。研究者、政府関係者、学生、経営者、主婦そして記者――事件発生から数週間経た今日に到り、少なからぬ人が口にするのが、「こんな大掛かりで巧妙なテロをアラブ人が計画出来るわけがない。これは、アラブ人ないしムスリムが関ったように見せかけた犯行だ」という「陰謀説」である。 世界貿易センター、ペンタゴンやペンシルバニアで命を落とした方々とその遺族が最も悲惨な直接的被害者であることは言うまでもないが、国際社会を恐怖に陥れたという意味で、世界中の人が今回のテロの被害者であると思う。 そして、善良なアラブ人たちも大きな苦しみの中にある。テロ事件発生から、米国に住むアラブ人は不審の目で見られ、嫌がらせにあっている。事件直前にワシントンを訪ねていたパレスチナ人の友人は、クウェイトに戻る際、ダラス空港で米警察の尋問を受け、苦々しい思いをしたという。九月からニューヨークへの留学が決まっていたクウェイト人の友人は留学の延期を余儀なくされた。クウェイト、アラブ首長国連邦、そしてサウジアラビアの各政府は、自国の留学生の安全が脅かされていると判断して、希望者は無料で帰国できるよう措置をとっている。

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