十一月一日、陳水扁総統の就任後初の著書『世紀首航』(世紀の初航海)が出版された。「政権交替五百日の沈思」のサブタイトルが示す通り、総統就任後の日々を振り返ったものだが、その内容には野党ばかりか与党・民進党内部からも物言いがついている。 陳総統は著書のなかで「野党は常に政権奪取の機会をうかがっていた」と、親民党の宋楚瑜、国民党の連戦両氏への不信感を示す一方、「派閥の利益を重んじるばかり。これでは政権担当は今期限り」と民進党内の派閥主義を指弾。さらに今年初夏以来、陳政権支持を公言している李登輝前総統に対しても、引継ぎに際して「国家機密書類が残されていなかった」と不満と疑念を表明している。 新聞は、陳総統の著書を「周囲を漏れなく批判、“総統反省篇”はどこ?」(聯合報)と揶揄、野党関係者からは「被害妄想回顧録」との声も聞かれる。これに対し、版元や陳水扁側近は「十二月の立法院(国会)選挙を控えて、総統の理念を訴え、票固めを狙ったもの」と説明するが、民進党他派閥では「野党批判はともかく、選挙前の大事な時期に民進党や李登輝を腐す神経は理解に苦しむ」といぶかる声も上がっている。

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