フェデックスvs.UPS、真の勝者は誰か

執筆者:上田春樹2001年12月号

どれだけ安く便利なサービスを実現するか、「物流市場の覇権」を狙いフェデックスとUPSが鎬を削る。激化する競争に「官業」がついて行くのは容易でないが、競争は消費者に利益をもたらした。[ニューヨーク発]エルビス・プレスリーの故郷として知られるテネシー州メンフィスの国際空港。午後十一時半を回ると爆音を伴い貨物機の群れが滑走路に降りて来る。ここは全米や海外から荷物を積んだフェデックス機が集まる同社最大のハブ(拠点)だ。 発着する貨物機は一日百機以上。通常で百五十万個、多いときには二百万個もの荷物を降ろし、九千人の従業員で夜を徹して仕分けする。八十四本もあるベルトコンベヤーには荷物一個一個の行き先、顧客情報などの情報が書き込まれたバーコードの読み取り機が張り巡らされ、誤配率は限りなくゼロに近い。コンピューターの管理システムは九千人の作業者にも全く無駄な動きをさせず、早朝五時までにはすべての貨物機が飛び立つ。 メンフィス空港は三十年前、フェデックスが誕生した場所でもある。当初は米軍向けの緊急物資を細々と運ぶ小さな会社だったが、現在では従業員数が十四万八千人、毎日三百三十万個もの宅配物を運ぶ。日本の貨物航空会社は機材を全部足しても約二十機だが、フェデックスの専用機は六百機以上、二百十一カ国もの空を飛んでいる。しばしばヤマト運輸や日本通運とフェデックスの相似性が議論されるが、実際は同社に正面から対抗できる会社は、同じ米国のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)くらいしかない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。