国連が発表したエイズ統計では、インドネシアは日本と並んでHIV感染者の急増が危惧されている国にあげられているが、保健省が発表している感染者数は全土で千六百七十八人にすぎない。 しかし、世界エイズデーの十二月一日にジャカルタでメガワティ大統領も出席して開かれた記念式典に参加したスユディ保健相が「感染者は推定で八万から十万人にのぼる」と発言。パニックを呼んでいる。 ジャカルタには東南アジア最大とも南半球最大ともいわれる歓楽街があり、貧困に喘ぐ地方出身の少女らが売春婦として働いている。彼女らの大半は、低賃金のため医療機関で定期的なエイズ検査を受けることができず、避妊具の使用がエイズ予防に有効という知識も持たない。 このため、「歓楽街はエイズの温床」と報じられ、大半の売春宿を管理・運営する中国系インドネシア人やショバ代などを稼いで黙認している警察当局が保健相の発言に猛反発。当の保健相は「感染の主な原因は、麻薬摂取の際に注射針を使い回すことにある」と、売春の“安全性”にお墨付きを与えるような発言を余儀なくされている。

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