V字回復した「ゴーン日産」の内憂外患

執筆者:加納修2001年12月号

「ゴーン改革」によって、日産自動車は急速に業績を回復しているかに見える。しかし好調な数字は運に恵まれた側面も強く、見せかけだけの“有能社員”が幅をきかせる…… 日産自動車で売れている新車は何か――この問いに答えられる人はまずいない。そもそも最近の日産の新車が何であるかを知る人も、実はそれほど多いとはいえないだろう。 では日産で最も売れているのは何かといえば、それはカルロス・ゴーン社長そのものだ。様々な報道でその経営手腕が高く評価され、新しい日産神話を作ったといえるゴーン氏。確かに流れは作ったかに見える。しかし肝心の日産再建の行方はいまだ闇の中。ゴーン流の派手なパフォーマンスとカリスマ性の陰で、むしろ日産の混乱は拡大の気配すらある。今や「経営の神様」が「裸の王様」になることに危機感を覚える社員も少なくないのだ。 十一月に入ったある週末、東京駅にほど近い書店の中で催されたサイン会。通常は、若い女性や中年男性など、ファンに特定の傾向が見られるが、興奮の面持ちで順番を待つ長い列には、若い女性もいれば、老齢の夫婦連れ、中には子供連れもいるという一風変ったものだった。やがて列が静かに動き始めると、その先で、にこやかにサインをしていたのがゴーン氏だった。

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