台湾を揺さぶる「大陸商機」

執筆者:本田善彦2001年12月号

米国経済の失速から台湾の停滞は深刻化し、大陸への期待が人々を支配し始めた。世論調査では「一国両制」を三〇%が容認。急速な中国シフトが新たな問題をつきつけている。[台北発]「昨年秋以降、中国大陸に向かう客層が明らかに変わりました」 これは台北の旅行代理店経営者の言葉だ。「里帰りの高齢者や中小企業経営者」に代わって「家族連れやホワイトカラーのエリート」が激増しているという。最近では「大手企業が大陸赴任希望者を募ったところ、競争率が数十倍に達した」といった話を頻繁に耳にする。 書店では『我的上海経験』『透視大陸商機』など中国ビジネスをテーマとした単行本がズラリと平積みされ、雑誌も大陸投資や移民を扱った特集号に人気が集まる。中国での就職事情を扱った雑誌では「中国での年収が二百万台湾元(約七百万円=中間管理職の年収の二―三倍)以下の者は台湾に残れ」と刺激的なタイトルが目に付く。 技能や資本、そしてチャンスのある者が、続々と中国を目指すようになった。十一月末には、中国定住者は台湾総人口の四%に当たる百万人に達したという。「持てる者は大陸へ、持たざる者は台湾に」の現象に、「短期的に台湾内部で新たな階級問題が発生する」と懸念する声も上がるほどだ。

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