「江沢民の怒り」狙いは李鵬つぶし

執筆者:藤田洋毅2001年12月号

「老江は本気で怒りましたよ」と中国筋は言った。七月一日の中国共産党建党八十周年大会で江沢民総書記が訴えた「三つの代表論」に対し、保守派の牙城とされる『中流』『真理の追求』の二雑誌が「反マルクス・レーニン主義」「トウ小平理論からの逸脱」と決めつけ、「党の変質をもたらし、ひいては亡党の道にいたる」と、反対の論調を掲げたからだ。 直後の政治局常務委員会議で、江の意を受けた尉健行党中央規律検査委書記が「両雑誌への処分を討議したい」と口火を切った。政治局会議の全体討議と同意を経て発表した重要講話への批判は、江に対する攻撃を意味するばかりか、党中央への服従を定めた組織規律に違反するからである。 厳重処分を即座に唱えたのは胡錦濤国家副主席。朱鎔基首相、李瑞環全国政治協商会議主席も短い言葉で賛同を示した。だが、ナンバー2の李鵬全国人民代表大会常務委員長は、やや間を置いて重い口を開いた。「処分の前に、さらなる調査が必要ではないか」と。「この瞬間、李鵬は墓穴を掘ったのです」と同筋は解説する。李鵬は自らに対し忠誠を誓う幹部を守り抜くことで強固な政治的基盤を保持してきた。今回も、両雑誌の背後にうごめくトウ力群元党中央宣伝部長らを擁護しようとしたが、「この問題に限ってはその重大性を読み違えた」のだという。多数決で李鵬の意見は却下され、両雑誌の停刊が正式決定された。

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