祝祭日とスポーツ

執筆者:生島淳2001年12月号

 毎年この時期になると、決まってウディ・アレン監督の「ハンナとその姉妹」が見たくなる。この映画、サンクスギビング・パーティを映画の始まりと終わりに配し、ある家族の一年間の風景をサンドイッチした映画である。 七面鳥のローストに、にぎやかなおしゃべり、笑顔に隠された失意。これはアレンの映画でしか出せない雰囲気だ。 しかしこの映画で描かれるサンクスギビングには、アメリカの一般家庭にある大切なものが一切出てこない。フットボールである。 数年前、横田基地のアメリカ人の家庭でサンクスギビング・パーティに招かれた。そこで見たものは……。 アメリカ人男性にとって、サンタスギビング・ウィークエンドは、七面鳥をローストする係に任命されること、それを切り分けること、そして朝っぱらからフットボールを見ることを許された週末なのである。 もちろん招待されたその時は、日本時間だからテレビの生放送はなかったが、朝から延々と過去の名勝負のビデオが流されていたのである。朝からビールも振舞われていた様子で、それはそれはマッチョな光景であった。「ハンナとその姉妹」にはフットボールが出てこないと書いたが、その理由は今になれば分かる気がする。

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