「最強の物流企業」を目指すドイツポスト

執筆者:大塚和重2001年12月号

慢性的赤字の国営郵便が突き進んだ強気の拡大戦略。経営陣のヘッド・ハンティングほか、大胆なリストラ策を後押ししてきたのは、来るべき国際競争時代を視野に入れた政府の決断だった――。[ボン発]「今年の収益は昨年を上回る」。八月二十一日、ドイツ・ケルンの会見場で、銀髪・長身の紳士が詰めかけた報道関係者を前に、上期決算説明の熱弁を振るっていた。クラウス・ツムウィンケル氏。独郵便最大手、ドイツポストの社長である。 同氏の肩書が示す通り、かつての国営郵便事業を引き継いだドイツポストは、現在は民営企業である。本社はボン。二〇〇〇年十一月には株式上場を果たし、オランダのTNTポスト・グループ(TPG)に次いで欧州の旧国営郵便会社として二番目の上場企業となった。 ドイツが郵便民営化の準備に着手したのは、ベルリンの壁が崩壊した一九八九年。それまで連邦郵便電気通信省のもとに電気通信、郵便、郵便貯金の郵政三事業が国営で運営されていたが、同年に連邦郵便経営基本法が成立、三つの公社となった。九五年には基本法(憲法)改正を受け、最終的な民営化に向けそれぞれ株式会社(連邦郵政通信庁を公法上の持株法人とする特殊会社)に改組した。電気通信事業を引き継いだドイツテレコム、郵便のドイツポスト、郵便貯金のドイツ・ポストバンクだ。

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