中国人科学者の実験室で

執筆者:梅田望夫2002年1月号

 さる十二月十九日、サンノゼ・ダウンタウンのカリフォルニア料理店「A.P.スタンプス」で、私は三人の友人たち(アメリカ人とイギリス人とインド人)とクリスマス・ビジネス・ディナーを楽しんだ。 最近のディナーの席では、必ずといってよいほど、飛行機のセキュリティの話になる。食後のチーズを味わいながらの彼らの結論は、(一)どれだけ空港でのセキュリティを強化しても本気で自爆テロを敢行しようとするテロリストを完全に止めるのは無理、(二)だから機内で何か不穏な挙動をする者があったときには自分たちは率先して徹底的に戦う、(三)そういう乗客の姿勢によって、テロが未然に防止される確率は飛躍的に上がるはず、というものだった。 だから二十二日に起きた「パリ発マイアミ行きアメリカン航空機の爆破未遂事件」の顛末(身長百九十三センチの屈強な犯人は、乗員・乗客数名との格闘の末に取り押さえられ、乗客から集めたベルト二十本で席にくくりつけられ、乗客の中にいた医師に鎮静剤を注射された挙げ句に逮捕)を聞いても、私はあまり驚かなかった。決して好戦的ではない比較的リベラルな思想の持ち主たちですら固めている自衛の覚悟を耳にし「君たちは本当に強いんだね」と心の中でつぶやいてから、たった三日しか経っていなかったからだ。

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