いまに爆発する あの民族不審国

執筆者:徳岡孝夫2002年1月号

 夜が更け、仕事が最もはかどる時間だった。電話が鳴って、出ると親しい友からだった。「えらいこっちゃ、日本が北朝鮮の船を撃沈した。きっと報復がある。お前んとこ、米は十分あるか?」 驚いてラジオを入れると、事件は奄美大島沖のことで、沈んだ船から投げ出された三人を、いま救おうとしている。だが武器を持っている危険があるし、夜の海は荒れているという。米びつを調べると、あとまだ一週間分くらいある。無ければ……近くのスーパーは夜の十二時まで開いている。 テレビをつけてみた。お笑い番組をやっていた。ふざけた画面に、ニュースが字だけ流れる。友は「そうやろ? それを平和ボケというんや」と言った。 相手が沈むのを至近距離から見た巡視船の船長が「急に出火してびっくりした」と記者会見で語った。撃没ではなく自爆である。だが彼らの国はノドン、テポドンを持っている。撃沈されたから報復だと称し、日本にミサイルを撃ち込みかねない国である。日本人のうち何人が、手持ちの米の量を点検しただろうか。 いつ、どこで申し合わせたのか、日本のマスコミは一斉に「不審船」と言ったり書いたりしている。誰かが訴訟を起し、最高裁かどこかで刑が確定するまで、あれは北朝鮮の船だと呼びたくないらしい。私はせめて「武装船」と呼びたい。ヤツらは携帯用ロケット・ランチャーまで持ち、巡視船三隻のうち二隻に一発ずつ発射した。

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