人員も予算も大幅増、検察出身の委員長もやる気満々。しかし行く手には、「市場の透明性確保」をほったらかしにして「株価対策」に血道を上げる政治家たちがいる……。「大変喜ばしい」。証券取引等監視委員会の高橋武生委員長から、あふれんばかりの笑みがこぼれた。検察出身の同氏は、かつて東京佐川急便事件、ゼネコン汚職事件などの捜査を手掛けた猛者。武骨なイメージとは裏腹に、昨年十二月末に開いた記者会見では、妙ににこやかだった。それもそのはず。前日までに平成十四年度の予算要求が「ほぼ満額」との回答を得たのだ。来年度の人員も百八十二人と、現在の一・五倍に拡大する。「市場の番人」監視委がようやく眠りから覚めようとしている。今年度から来年度にかけて、電子開示財務内容分析やインターネット向けの新型監視システムなど、インフラ設備もハイテク化。「大蔵省(現金融庁)の盲腸」と陰口を叩かれるほど日陰の存在だった監視委が、「ヒト、モノ、カネ」と急速に布陣を整え始めた。小泉首相が掲げる行革路線から逆行してまでも監視委の強化が図られるのは、昨今の株価低迷や市場不信の一因として、監視委の「インポテンツ」(機能不全)が一般投資家やマスコミの槍玉にあがり始めたからである。

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