四月一日のペイオフ解禁を前に、電力業界が自前の銀行、インハウス・バンクの設立に水面下で動き始めた。電力業界は電気料金の徴収で莫大な日銭が銀行口座に流れ込んでおり、ペイオフ解禁でその大半がリスクにさらされることを懸念している。もちろん電力は業界全体で二十八兆円にも及ぶ借入金を持つが、大半は社債や保険会社からの借り入れで賄っており、銀行への遠慮がないという事情もある。電力としては定期預金などの保護範囲に上限が設けられる今年四月よりもむしろ、普通口座、当座預金のペイオフが実施される来年四月一日を警戒しており、準備を進めている。 電力は自己資本比率などの点で健全経営とはいえないが、格付け、信用力ともに相対的に高い。不良債権ゼロからのスタートになるため、電力ビジネスで押さえた多数の顧客の支持は高いと金融関係者はみる。設立した銀行を電気料金の振り込み銀行に指定すれば、決済リスクが低下する上に金融機関などに支払う手数料も大幅に削減できる。すでに東北電力などは金融子会社を設立、東京電力も研究を進めている。全国九電力がインハウス・バンクを設立することで一部都銀や有力地銀から顧客が流出する可能性が高い。

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