一台のパソコンが盗まれたことで、防衛庁が密かに進めてきた「将来戦闘機の研究」が明らかになった。かつて次期支援戦闘機(旧FSX、現在はF2)の開発をめぐり、米国との間で政治問題化したこともあっただけに、将来戦闘機計画が具体化すれば、やっかいな問題として浮上するのは確実だ。 パソコンは昨年十一月、名古屋の三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所から盗まれ、同社が警察に被害届を提出した。パソコンには防衛庁が発注した将来戦闘機の設計に使う模擬装置(シミュレーター)の関連データが入っていたが、「防衛秘密」は入力されていなかった。 防衛庁は「庁としての被害はない」と強調しているが、実は「将来戦闘機の研究」をしていたこと自体が、高度の防衛秘密だった。 現代の空中戦は、射程が五十キロ以上ある中距離ミサイルが発達したことにより、いち早く敵機を発見してミサイルを発射した方が勝ちという“一撃離脱”の戦術が主になっている。 このため、各国ともレーダーに映りにくいステルス性を持った戦闘機の開発に懸命だが、ステルス機は独特の形状をもつうえ、比重の大きい塗料を使わなくてはならず、どうしても運動性能が犠牲にならざるを得ない。この二律背反する機能を両立させようというのが、防衛庁の将来戦闘機の研究課題なのだ。

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