太子党にもいいヤツはいる

執筆者:篠原令2002年2月号

『やがて中国の崩壊がはじまる』『「日中友好」のまぼろし』『この厄介な国、中国』といった題名の本が居並ぶ中に、私が上梓した『友をえらばば中国人!?』が並んでいる。新華僑の友人たちが「闇夜の灯火」だと評価してくれたものだ。中国という国は奥の深い国であり、中国人は日本人とは異なった価値観をもっている。このことを私は三十年間の中国人との関わりの中から、三十六のエピソードにまとめてみた。しかし書き残したことは山ほどある。 たとえば諸悪の根元のように言われている太子党(有力者の子弟たち)。かつて李鵬の息子李小鵬、トウ小平の次男トウ質方、陳希同の次男陳小同らが北京の四大花花公子(プレイボーイ)と呼ばれたり、八〇年代の「官倒」(高級官僚による汚職)からつい最近の「廈門密輸事件」に至るまで、いつも太子党の介在が取り沙汰されている。しかし私の親しくしている太子党たちが、こうした権力を笠に着た腐敗を苦々しく思ってきたのもまた事実である。太子党イコール悪とは言い切れないのである。 革命第一世代、第二世代の多くは抗日戦争勝利後、または新中国成立後に子造りに励んだ。したがって太子党たちの多くは日本の団塊世代と同じか数年若いのが普通だ。この世代はまた文革世代でもある。そんな中で若干年長の姚明偉氏は太子党の兄貴分的存在。温厚で情誼に篤く人望があった。父親は副総理、政治局常務委員を歴任した姚依林である。

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