愛国者たち

執筆者:生島淳2002年2月号

 クラシックのCDが売れている。その筆頭は小沢征爾指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートのCDであるが、先頃来日したサラ・ブライトマンの「クラシックス」もCD店の棚で好位置をキープしている。 このCDで一番の人気曲は「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」、さよならを言うとき。メロディライン、そして彼女の歌声を聞けば、ああこの曲か、とうなずく人も多いはずだ。実は彼女が来日するまで名前を知らず、私が知っていたのは、「何だ、NBAの退場の音楽を歌ってる人じゃないか」 ということだった。 NBAでは選手が6ファウルを犯すと退場となるが、その選手が相手チームの主力だったら、アリーナは興奮の坩堝と化す。それだけにとどまらず、さらに興奮を煽るため「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が流れる。フルヴォリュームで彼女の朗々たる歌声が流れ、それをバックに二万近くの観客は退場した選手にグッバイと手を振る。 アメリカ流の洒落っ気。好きである。観客は試合だけでなく、音楽やハーフタイムショーなど、空間のエンターテインメントを満喫しようとする。そういう意味で、音楽とアメリカのスポーツは切っても切れない関係にあるのだ。

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