前回と変わらぬシラク大統領とジョスパン首相の対決の上、争点もぼやけたまま。四月の大統領選と六月の下院選の結果次第では、「保革共存政権」がさらに続く可能性もある。[パリ発]三月二日、パリ郊外のスタジアム。フランスのジャック・シラク大統領とリオネル・ジョスパン首相は、ラグビー国際試合「フランス対イングランド」をそろって観戦した。 試合はイングランドを圧倒し続けたフランスが「二十対十五」で勝利。一九九八年サッカーW杯での優勝以来、あちこちで目につく「強いフランス」を再び国民のイメージに焼き付け、両首脳はテレビ映像を前に満面の笑みで勝利を讃えた。国威と国益にかかわるような場面では、政治もメディアも左右の区別のない連携ぶりを見せるフランスの伝統は健在である。 ただ、スタジアムを一歩出れば話は別。故ドゴール将軍から始まる第五共和制下での六代目の共和国大統領を決める選挙が四月二十一日に迫っている。「強いフランス」を率いるのは誰なのか――。時をほぼ同じくして保革を代表する両者が激しく火花を散らし始めた。 社会党を軸にした左派連立内閣を率いるジョスパン首相はこのほど、インタビュー形式で政治を語る『ル・タン・ド・レポンドル(返答の時)』を出版した。一九九七年の内閣誕生から五年にわたって続く保革共存政権(コアビタシオン・保守の大統領と左派内閣)について首相は、「シラク氏は国民への公約をないがしろにし続けた無責任な大統領」と断じ、「一九九七年以降、我々の政府の成功がシラク氏のイメージを高めてしまったのは言うまでもない」と痛烈に皮肉った。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。