「脱・欧州」が進むイギリスの防衛産業

執筆者:小西太2002年4月号

アメリカの次世代主力戦闘機開発プロジェクトに、大きな役割を果たすイギリス企業。安全保障というプリズムを通して見れば、両国を隔てる大西洋はドーバー海峡よりはるかに狭い。[ロンドン発]再び軍拡の道を歩み始めた米国。唯一の超大国の“独走”に世界が懸念を募らせる中、その米国にぴたりと寄り添う国がある。アングロサクソンの盟友イギリスだ。アフガニスタンでの対テロ戦争で米国と共闘した英国は、いままたイラクへの軍事作戦でも米国と行動を共にしようとしている。米英は再編が進む防衛産業でも盟約を結んでいる。アフガン、中東、インド・パキスタン。激しさを増す国際紛争を読み解くカギは、戦前と戦後の二つの覇権国家、英国と米国の特殊な関係にある。英米間に横たわる大西洋は、英国と欧州大陸を隔てるドーバー海峡よりはるかに狭い。「二十一世紀のアポロ計画」「我々はロッキード・チームの一員であることを誇りに思う」(英防衛大手BAEシステムズのリチャード・エバンス会長)。昨年十月、米防衛大手のロッキード・マーチンが米国防総省から次世代主力戦闘機「ジョイント・ストライク・ファイター(JSF)」を三千機受注した。BAEはロッキードと提携関係にあり、JSFの開発・生産の約一〇%を担う。ロッキードの契約総額は米防衛産業史上最大の二千億ドル(約二十六兆六千億円)。空前のプロジェクトに参画する“外資”は、BAEと英航空エンジン大手のロールス・ロイスだけだ。

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