「危機」「対策」「改善」「慢心」。確かに日本は、偽りにして同工異曲の復活劇を飽きもせず繰り返してきた。今また、いつか見たカタルシスの風景が広がっている。経済はカンフル漬けになっているにすぎないのだが……。 日本は三月危機を、官民挙げた乗り切り策で何とかしのごうとしている。日経平均株価は八日、一時一万二千円台を回復し、売買高もバブル期並みに膨らんだ。一九九〇年のバブル崩壊後、繰り返されてきたデジャ・ビュ(既視感)を抱かせる光景である。その間、経済の体力は消耗し、危機の水位は確実に上昇している。改革政権としての基盤を喪失した小泉純一郎首相は、前任者たちの轍を踏むのだろうか。 一九九三年の春を覚えておられるだろうか。バブル崩壊に伴う不良債権問題がいよいよ隠せなくなり、株価の底割れが懸念されるなか、政府は大々的な株価維持策(PKO)に打って出たのだ。不良債権の象徴である住宅金融専門会社(住専)については、大蔵省主導の先送り策が二月末にまとまった。 折から在庫調整が一巡したこともあり、景気はひとまず下げ止まったかに見えた。政界のドンといわれた金丸信前自民党副総裁が三月に所得税法違反の容疑で逮捕されるのを見た国民はカタルシスを味わった。日経平均株価は二万円の大台を回復し、外国人投資家の日本株投資再開が喧伝された。

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