アサヒビールとキリンビールが激しい鍔ぜり合いを展開するビール業界で、再編の可能性が囁かれ始めた。 アサヒは二月中旬、協和発酵の焼酎部門を二百億円で買収、総合アルコールメーカーに不可欠な焼酎事業を傘下に収め、キリンもこれに対抗する形で、三月五日に王子製紙の子会社の中国酒メーカーを六十億円で買収した。両社ともこれまで持っていなかった焼酎の製造免許の取得が目的と見られているが、次の焦点として「ビール業界内での再編」が浮上している。サントリーのビール部門が最大の標的となっている模様だが、サッポロビールも経営統合という形で狙われる可能性がある。 ビール業界は低価格品の発泡酒のシェア拡大競争で各社とも収益力が低下、大手四社体制では保ちそうもない。もともと商品ブランドの優劣がモノを言う業界だけに、他社の有力商品のとり込みは大きな魅力を持っている。かつてはキリンが六〇%を超えるシェアのために常に企業分割の瀬戸際にあったが、今や「競争状態が保たれる限り、どんな買収も可能」(業界関係者)。トップ二社の覇権争いの行方は、いっそう混沌としてきた。

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