日本を変えたが自分も「終わった」孫正義

執筆者:喜文康隆2002年4月号

「とりわけ公共の為政者たちの愚鈍さが、実務家たちに自由放任を好む偏見を強く植え付けた」(ジョン・メイナード・ケインズ『自由放任の終焉』)     *「新興企業向け株式市場である店頭(ジャスダック)市場と大阪証券取引所のナスダック・ジャパン市場が2003年3月末の統合に向けた協議に入った」 2月27日付け日本経済新聞の朝刊一面トップに掲載された、新旧二つの店頭市場の合併構想は、極めて興味深いニュースである。 日本のベンチャー企業のリーダーと目されてきたソフトバンクの孫正義と、米国店頭市場の雄「ナスダック」が合弁会社を設立して、日本にナスダック市場を開くと発表したのは1999年6月のこと。バブル崩壊から十年目を迎え、疲弊しきっていた日本の株式市場にとっては、名実共に「黒船の到来」だった。 アメリカニズムと成り上がりベンチャーの握手。大蔵省が主導するかつての証券行政の下では考えも付かなかったこの構想が、あれよあれよという間に実現したのは、その翌年の6月のことだった。その間の99年11月、頑迷固陋な点では「役所以上」との定評があった東京証券取引所が、ジャスダック(日本の店頭市場)以上に弾力的な上場を認める「マザーズ」市場を開設するというおまけまでついた。

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