なんて強い国 なんて強い人々

執筆者:梅田望夫2002年4月号

 2月27日、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は「回復は緩やか」とやや抑えた表現ながら、アメリカ経済が景気後退から抜け出しつつあるとの認識を示した。28日、米商務省は、昨年10―12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率(改定値)を前期比一・四%増と、速報値段階の〇・二%増から大幅に上方修正した。ダウ平均も一万ドルを超えて推移している。 昨年9月11日の同時多発テロ直後に、約半年後の経済状況がここまで好転するとは、かなりの楽観主義者でも予想できなかっただろう。経済合理性に基づいて行動する企業の設備投資は一三・一%減であることからみても、アメリカ経済がより深い景気後退に陥るのを食い止めたのが、旺盛な個人消費であったことは間違いない(個人消費全体六・〇%増、自動車など耐久消費財で三九・二%増)。 確かに利下げは繰り返された。自動車ゼロ金利販売も行われた。「テロとの戦いは変わらぬ日常を生きること」と、政府は国民に消費を続けるよう働きかけた。その効果が出たのだと口で言うのは簡単なのであるが、テロ直後四半期GDPのこの数字を現実に見せつけられると「この国には、広くあまねく、将来への希望が存在しているのだ」と改めて驚きの気持ちを禁じえない。

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