諸悪の根元・中東に一条の光

執筆者:徳岡孝夫2002年4月号

 中東の和平は、われわれが生きているうちには成らないだろう。ユダヤvs.パレスチナの抗争は、全世界を破滅へ引きずり込むブラックホールかもしれない。このコラムで、何度もそう書いてきた。 初めてそういう終末観めいたものを抱いたのは三十年前、ところはテルアビブである。一九七二年は暗い事件の多い、人を悲観的にする年だった。 私は浅間山荘落城の当日は東京に戻っていたが、あれは無茶苦茶に寒い軽井沢だった。続く妙義・榛名の連合赤軍事件の現場にも、風花が舞っていた。そして同年五月三十日のテルアビブ空港襲撃事件。直後に現地に着いた私を見る、空港警備員の顔がこわばっていた。さらに、生き残った岡本公三の軍事裁判。 軽井沢の犯人は、まだしも(警官を撃ちはしたが)人質の命を奪わなかった。群馬の山では同志を殺した。テルアビブでは空港ビル内で自動小銃を乱射し、無辜の民を殺した。岡本は偶然死に損ったが、残る赤軍二名は自爆した。決死隊である。あれは、昨年の九・一一テロに至る自爆テロの水門を開いた。 ニューヨークで起ったことは、中東で連日のように起っている。双方が律義に、一つやられたら一つ仕返す暴力の無限連鎖は、始まってもう一年半になる。

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