看板倒れに終わる知的財産戦略会議

執筆者:矢吹信2002年4月号

首相直属の知的財産戦略会議が三月二十日にスタートするが、実態は全くの官僚任せ。国家戦略として知的財産を活用しなければ、日本の再浮上はありえない。「知的財産の戦略的な保護・活用を国家目標とします。このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進します」 二月四日の施政方針演説でこう訴えた小泉首相の意を受け、三月二十日、「知的財産戦略会議」が立ち上がる。知財戦略を話し合うための首相直属組織の設立は、もちろん初めてだ。知的財産というのは、経済的付加価値を生む知識資産のことで、代表的なものでは特許や著作、意匠権であり、広くは経営や製造ノウハウなどの企業秘密も含む。「安い労働力に加えハイテク武装までした中国に、モノ作りでは太刀打ちできない。日本経済再生のためには、技術開発をテコにした包括的な成長戦略を練る必要がある」。戦略会議を後押しした与党幹部もこう危機感を露にするように、知的財産の保護・育成は国家的課題であり、会議の設置自体は評価できる。 しかし、残念ながら知的財産戦略会議は看板倒れに終わるだろう。現在の政府の動きを見ていると、とても「本気」には思えないからだ。 まず、最も気になるのはそのメンバー構成である。政府側からは小泉首相はじめ、竹中平蔵経済財政担当相、尾身幸次科学技術政策担当相ら関係閣僚九人が参加するものの、なぜか財務相と外相の名が見当たらない。

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