【ブックハンティング】 宴のあとは……

執筆者:増井朔2002年5月号

 サッカーのワールドカップ開催が一カ月余りに迫った。欧州と南米から見れば長らくサッカー不毛の地であったアジアで初の祭典が開催されるのは慶賀すべき歴史的事件である。かつて球蹴り小僧であった小生には隔世の感があり、誠に感慨深い。 大会を前にしていささか気が早いけれども、この日韓共催のW杯はどんなイベントとして人々の記憶に残るのだろうか。一九六四年の東京オリンピック、七〇年に大阪で開催された万国博覧会を思い返してみると、この長期不況下のW杯は世界に「日本の終わり」を告げたイベントとして記憶されるような気がしてならない。過剰な盛り上がりが目立てば目立つほど、「宴のあと」が気にかかるのだ。 サッカーは歴史的に政治や経済と切っても切り離せない関係をもってきた。アフリカ出身のジャーナリスト、サイモン・クーパー著『サッカーの敵』(柳下毅一郎訳、白水社)は、きれいごとで済まないサッカーの世界を赤裸々に描いた渾身のリポートだ。 二〇〇二年W杯のテレビ観戦者は一説には延べ四百億人を上回るとも言われる。これだけの人に意味を持つとなれば、「ゲームはもはやゲームではない。フットボールがただフットボールだったことはないのだ。フットボールは戦争や革命を起こし、マフィアや独裁者を魅了する」。

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