サッカーW杯の放映権を握るドイツのメディア大手キルヒが破綻したが、その陰には今秋の総選挙で再選を狙うシュレーダー首相の政治的思惑がちらついている。 ベルリンの消息筋によると、キルヒの創業者レオ・キルヒ氏は、バイエルン州首相で最大野党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の首相候補でもあるシュトイバーCSU党首と長年にわたり親密な関係にある。しかも、シュトイバー氏はキルヒの最大債権銀行、バイエルン州立銀行の事実上の経営責任者。「キルヒ氏とシュトイバー氏の二人三脚で巨大メディア企業が育成された」というのが専らの見方。 シュトイバー氏にとってキルヒ破綻は大きな痛手で、逆にシュレーダー首相にとっては九月に予定される総選挙の有力ライバル候補をたたく絶好の機会になったことは想像に難くない。首相はキルヒ救援が十分可能だったにもかかわらず、全く腰を上げようとしなかったという。金融筋も「三年前の建設大手フィリップ・ホルツマン経営危機の際には直接介入して金融支援策をまとめた首相が、今回何もしなかったのは政治的打算があったから」と指摘している。

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