エリツィン時代の利権政治への決別を謳ってきたプーチン政権下でも、新興財閥の影響力は無視できない。だがTV6の閉鎖・放送権入札の顛末からは、彼らを利用する大統領のしたたかさが浮かび上がる。[モスクワ発]世界の有力企業トップが一堂に会した一九九六年二月のダボス会議。その舞台裏で、巨額の資金とマスコミを支配し、後に「七人の銀行家」として知られるようになるロシアの新興財閥トップたちと政権の間に、ある「密約」が成立した。新興財閥は四カ月後の大統領選挙で再選が絶望視されていたエリツィン氏の窮地を救い、政権は見返りに利権を与えるという内容だ。 それから六年。新興財閥とロシア政権は、再び「密約」を謀る。民間テレビ局TV6の閉鎖を受け、三月二十七日に実施された第六チャンネルの放送権入札がその舞台だ。ただし、支持率約七五%を誇るプーチン大統領と新興財閥の力関係は、六年前の構図と逆転。プーチン政権に擦り寄り、影響力を伸ばそうとした企業家たちは、したたかな大統領によって巧みに取り込まれた格好となった。「マスコミとは常に政治だ」 九六年の「密約」で主役の一人を演じた政商ベレゾフスキー氏が支配するTV6は、国内で唯一残った反政権系広域テレビ局だ。一月十一日、プーチン政権は政権系企業を通じてそのTV6の親会社を清算に追い込み、同二十二日には放送権を取り消した。

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