英女王エリザベス二世の母、エリザベス皇太后が三月三十日、百一歳で亡くなり、四月九日、ウェストミンスター寺院で各国政府の代表も多数参加し、厳かに葬儀が営まれた。 その当日までの四日間、棺は国会議事堂のウェストミンスター・ホールに安置され、一般市民に公開された。皇太后に別れを告げる市民の列は七、八キロに及び、当局は列が絶える葬儀当日早朝まで開放せざるを得なかった。いかに皇太后が国民に愛されていたかを改めて思い起こさせたのである。 エリザベス皇太后は一九〇〇年、スコットランドの貴族の家に生まれた。二三年、国王ジョージ五世の次男アルバート王子と結婚。国王の死去で、長男がエドワード八世として即位したが、離婚歴のある米国のシンプソン夫人との結婚を望んで退位したため、三六年、アルバート王子がジョージ六世として王位を継承した。 王妃として、また五二年に夫が亡くなった後は皇太后として、一つの範を示してきた。今日、英王室が世界から払われている敬意の少なくない部分が、エリザベス皇太后に負っているといっても過言ではないだろう。 例えば、外国を訪問した各国元首の中で、接受国から最も手厚いもてなしを受けるのはエリザベス女王、つまり英王室である。もちろん特別な関係にある国同士、破格のもてなしをすることはある。しかし一般的に、英王室が国際儀礼の世界において最も敬意を払われていることは疑いを入れない。

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