「株主価値を極限化する経営」や「株主本位の経営」が定着する中で、企業に新たな課題が出現してきている。株主や投資家を対象にした各種の広報活動、すなわちIR(インベスター・リレーションズ)をどのように展開するかである。 日本企業の強さの源泉とも言われた株式の持ち合いはすでに崩壊した。それに対応して機関投資家や個人投資家など流動性の高い株主に、いかに安定株主になってもらうか、いかに自社への信頼を高めてもらうかが、戦略的な課題になっている。株主の流動性が高まるなか、一度でも株主の支持を失った企業がどうなるかは、昨今の不祥事に明らかだ。 資金調達の機動力を高めたり、敵対的な買収に対抗したりするためにも株主の理解と支持は不可欠で、かつてのように一部大株主の了解を得れば事が済む時代ではない。日本企業がまったくと言ってよいほど取り組んだことのなかった課題、それが株主との関係づくりである。 IRは、そうした経営戦略と密接不可分な活動と認識されるようになった。各種のセミナーには企業の担当者が殺到し、どのようなタイミングでどのような情報を発信すればよいかを学ぼうと必死である。かつては「事業報告書を制作する編集プロダクション」程度にしか考えられていなかったIR支援会社も、「経営課題と直結したIR戦略を提示するコンサルティング会社」へと変身しつつある。

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