イスラエルとパレスチナの衝突は激化の一途を辿っている。この問題に関する議論は、どちらかの立場に肩入れして「代理戦争」の様相を呈することが多いが、どちらが悪いと単純に決められるのであれば、問題はとっくに解決してしまっているはずだ。 交渉の難関となっているのは、(1)占領地のユダヤ人入植地、(2)パレスチナ難民のイスラエル国内への帰還権、(3)エルサレムの帰属、の三点である。二〇〇〇年夏のキャンプ・デーヴィッドII会談でこれらの問題をめぐる交渉が決裂したことから、衝突が再燃した。バラクの譲歩案をアラファトが拒否したことにより、イスラエルの和平推進派の熱は一気に冷めた。同年九月、シャロンはエルサレム旧市街のイスラム教聖域を強行訪問して挑発し、受けて立ったパレスチナの民衆蜂起や自爆攻撃はイスラエルの世論を硬化させ、シャロン政権の誕生をもたらした。 どちら側も「自分こそ被害者」と主張して武力行使を正当化する。政治指導者は強硬姿勢を取ることによってのみ支持を得られるという構造ができあがってしまっている。 込み入った経緯を読み解くために信頼のおける論者を紹介しておきたい。立山良司は紛争と和平交渉について、バランスの取れた視点を提供している。和平交渉に関しては「不可能だ」「不公平だ」「合意はもう崩れた」といった、不備をあげつらう論調が目立つ。ここまでこじれてしまった以上、交渉が簡単に進まないのは当然である。「失敗する」と予想しておけば大抵は当る。そこには深い分析もいらないし、そもそも戦乱で苦しむ人人への思いやりに欠けている。

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