欧州は自由化で何をめざすのか

執筆者:小西太2002年7月号

独占か開放か、それが問題だ。市場を閉ざして他国を狙い撃ちするフランス、海外に新天地を探す英国企業。ここではドメスティックな戦略はもう通用しない。[ロンドン発]英国で「電力のウィンブルドン現象」が起きている。ウィンブルドン現象とはもともと、米国や大陸欧州の金融機関が幅を利かす英金融街シティを外国人選手ばかりが活躍する全英テニス選手権(ウィンブルドン大会)になぞらえた言い方だが、同じ現象が電力市場でも始まったのだ。 一九九〇年に始まった自由化で、英政府は中央発電局(CEGB)を「発電」「送電」「配電」「小売」の四部門に解体し、送電を除く三分野に新規参入を認めた。ウィンブルドン現象が目立つのは配電と発電だ。自由化で誕生した十二の配電会社はやがて九社に集約され、うち六社が仏、米、独など外資企業に買われている。首都ロンドンを基盤にするロンドン・エレクトリシティーは仏電力公社のEDFが九八年に買収した。 発電も今年に入って相次ぎ外資の傘下に入った。二〇〇二年三月には独電力大手のRWEが英最大手のイノジーを総額五十五億ポンド(約一兆三百億円)で買収。英二位のパワージェンも独エーオンが買収することで合意済みだ。両社が買われたことで、旧CEGBの発電部門は残すところ、原子力発電のブリティッシュ・エナジー一社になった。

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