対イラク軍事行動を視野に、米国経済には軍需の支えが続くだろう。米国頼みの日本にも景気回復期待が拡がっている。だが構造改革を放り出し、相手にとって「有事の備え」にもならない国が、楽観に浸ることなど許されようか――。 グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の警句、「根拠なき熱狂」を借りて言えば、日本経済に対する「根拠なき楽観」が政策当局や企業経営者の間で広がり始めた。一―三月期の実質成長率がプラスに転じただけで、デフレや不良債権、過剰債務など日本経済の根本問題を忘れてしまう健忘症の代償は高くつくに違いない。 日本政府がノー天気に景気底入れ宣言を出すさなかに、グリーンスパンFRB議長は六月に入って米経済に対する言い回しを微妙に変えた。一―三月期に前期比年率で五・八%成長した米経済の回復ピッチは「一時的かもしれない」と語り、景気はいま「ソフトスポット(足場の弱い局面)」にあると言及したのだ。 在庫調整の進展や個人消費の堅調さなど、日本では米経済の回復力の強さが熱心に語られている。だが、グリーンスパン議長はかねて米企業の設備投資の行方に注目してきた。ITバブルの崩壊で深手を負った米企業が設備投資に出るかどうかは、在庫調整から生産増加へと持ち直した米経済が、持続的な成長に戻れるかどうかの鍵を握るからだ。

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