新米の日本人 ラモス瑠偉『魂 HEART』

執筆者:船橋洋一2002年7月号

 ラモスには東京・神宮前のサバスTOKYOというブラジル料理店で会った。常連なんていう半端な客じゃない、ほとんど住み込んでいる感じだ。 日韓共催のワールドカップがもうじき始まる。日本代表チームの仕上がりの悪さが気になってしようがない。 余裕のあるのは中田英寿ほか数えるほどしかいない。後はポジションをこなすのに汲々としている。トルシエのフラット・スリー戦術では守りきれないのではないか……。 それから話は日本サッカー協会の旧態依然たる体質批判へと進む。「自分で変えて欲しいですよ。しかし、余り言えない。この二年間だけで二回ぐらい呼ばれているの」と笑った。協会も歯に衣着せぬ例のラモス語録にたまりかねたものと見える。 日本はフランス大会に続いてW杯出場切符を手にした。今度は開催国としてである。 一九六四年の東京オリンピック以来、スポーツの国際競技に日本国中がこんなにも沸いたことはなかった。ラモスに会ってから一週間後、私はクアラルンプールにいたが、夜、ホテルの部屋で見たCNNニュースは、練習するイングランド・チームを激励するためグラウンドを訪れた日本人女性の姿を映していた。ニコニコしながら車椅子を漕いでいる。

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