それでも株式市場を覆う「村上世彰」の影

執筆者:末羅征幸2002年7月号

東京スタイルとの戦いには敗れたものの、市場はむしろ村上氏の意を汲むかのように動き始めた。過剰な内部留保を抱えたままで株主価値を向上させられない「東京スタイル型企業」に対し、市場の圧力はより強くなりそうだ。 株式時価総額を上回る一千億円超の現預金を抱えた婦人服大手、東京スタイルに対し、日本初のプロキシーファイト(議決権委任状の取り合い合戦)を仕掛けた投資会社「M&Aコンサルティング」代表の村上世彰氏。実質筆頭株主として、(1)一株あたり五百円の配当、(2)上限五百億円の自社株買い、(3)社外取締役二人の選任などを要求していた彼の提案は、五月二十三日の株主総会で、接戦の末、全て退けられた。 総会後に記者会見した村上氏は、特徴的なギョロ目を見開きながら「残念ながら全面的に負けたということ。私の不徳の致すところ。読みが甘かった」と、早口で敗戦の弁を語った。「自分が考えているマーケットといまの日本のマーケットには隔たりがあった」と悔しさを滲ませた同氏だが、株を買い占めた企業の経営者に対し、資産の有効活用を迫る投資手法自体は、市場原理に則った合理的なものと言える。通産省OBで買収ファンドの経営者という物珍しさに加え、持論を滔々とまくし立てる本人のキャラクターも相まって、マスコミの注目度も高かった。村上氏の活躍で、日本ではなじみの薄い「株主による企業統治(コーポレートガバナンス)」という耳慣れない言葉も、かなり市民権を得た感がある。

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