異変、中国次期トップ胡錦濤を襲う「波乱」

執筆者:藤田洋毅2002年8月号

内部の会合で、江沢民が語った「四つの意外」。それは、10年前から次期最高指導者への道を走ってきた胡錦濤の前途が平坦ではないことを明らかにした。93年、トウ小平の「301病院入院」を世界に先駆けてスクープした中国ウォッチャーによる核心レポート。「こんなにやることが少なくて楽な同行取材は初めてですね」 新華社や人民日報などの記者が語り合った。四月二十三日から五月三日にかけ、胡錦濤中国国家副主席(政治局常務委員)のマレーシア・シンガポール・米国歴訪に同行した記者は、それぞれの報道機関でも経験豊かな選りすぐりである。ところが、胡錦濤弁公室の秘書は、そのベテラン記者らが「慣例に沿って」事前に提出した報道プランの多くを削除、速報はごく簡単なものとし訪問国ごとのサマリー記事も必要ない、など異例の指示を繰り出した。 同時に、記者らは「これまでになく、気を遣った」。普段なら、書き上げた記事は指導者の秘書と外務省スポークスマンの二段階チェックを経て送稿・配信するが、今回は四、五段階を通過しなければならず、「審査にとても時間がかかった」という。 ことに、歴訪に同行した、次期外相有力候補とされる李肇星外務次官の最終チェックは、微に入り細に及んだ。こうして、報道内容は何も新味がなく、使い古された常套句で埋め尽くされた。記者会見も開かれず、警備陣は胡と現地記者との「隔離」にも気を配ったという。

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