八期連続最高益更新。二千三百五十七億円の連結最終利益――。五月中旬に発表された武田薬品工業二〇〇二年三月期決算は、国内医薬品業界の「武田一強時代」を改めて印象付ける内容だった。父・六代目武田長兵衛が目指した多角化路線を百八十度転換し、武田を医薬品専業会社にして欧米の巨大製薬メジャーと互角に渡り合う企業に生まれ変わらせること。それが、九三年の就任以来、武田國男社長の描いてきたシナリオだ。ある市場関係者が「機関投資家が資産を運用するグローバルファンドの医薬品株として、もはや武田ははずせない」と指摘するように、そのシナリオはすでに実現し始めているとも言える。 もっとも、それを呑気に喜んでいられないのが、現在の武田である。同社の売上高は世界の十五位前後。海外での市場シェアは二%弱で、寡占化が進む世界の医薬品業界では、まだ「ニッチ製品で強い中堅企業」とみなされる存在に過ぎないのだ。中堅でも“メジャーリーガー”に変わりはない武田は、世界のスタンダードによって評価する投資家たちの厳しい視線に晒される。日本国内の論理だけに従って強者の地位に安閑とすることは許されないだろう。武田は新たな戦略を打ち出さざるを得ない時期に差しかかった。

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