九月下旬の総選挙を前に、「新中道」を掲げドイツを率いてきたシュレーダー首相が大苦戦している。タカ派のシュトイバー氏が政権を手中にすれば、西ヨーロッパの保守化の波は最高潮となる。[ベルリン発]ポーランド、チェコなどが欧州連合(EU)に加盟する予定の二〇〇四年には、「鉄のカーテン」の残滓が完全に消えるはずの欧州大陸にいま、東西欧州の政治潮流の違いを改めて印象づける現象が起きている。カーテンの東側で、冷戦時代の支配政党である共産党の後継政党が次々に政権復帰を果たしているのに対し、西側では、ドミノ現象のように中道左派政権が倒れ、右派政権に代わっているのだ。 西欧では九〇年代後半、イタリアに中道左派連合の「オリーブの木」が繁るなど、社会民主主義の時代が復活したかに見えたが、過去四年間に政治地図は大きく塗り替えられ、いまや欧州大陸に残る社民主義政権は事実上、ドイツだけとなってしまった。そのドイツでも昨秋以来、政権交代を望む国民の声は高まっており、九月二十二日の総選挙で、エドムント・シュトイバー・バイエルン州首相(六〇)を首班とする保守政権が誕生する公算が大きくなっている。タカ派のシュトイバー氏は、第二次大戦終了時にチェコのズデーテン地方やポーランドのシレジア地方から追放されその補償などを求めるドイツ人団体のパトロン的存在でもあり、シュトイバー政権が誕生すれば、ドイツの東の隣国との関係が軋みかねない。

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