アメリカはどれほど“優越”しているのか

執筆者:田中明彦2002年8月号

 なんとかインドとパキスタンの間の戦争の危機は、回避されたかに見える。パレスチナ問題は依然として大問題であるが、四月のころに比べると自爆テロの頻度は低下した。アフガニスタンの内政は不安定だし、米軍の誤爆などもあるが、壊滅的とはいえない。世界情勢は凪のような状態になったのかもしれない。したがって、個別の問題についての甲論乙駁には、あまり目立ったものがなかった。より根源的に現在の事態をどのようにとらえるのか、あるいは、今後の予測というような論調が目についた。現在が凪であれば、また風は吹き始めるであろう。嵐がくるのか。 根源的に現在の国際情勢をとらえるとすれば、最大の問題は、アメリカをどのように見るかということである。『エコノミスト』誌は「アメリカの世界における役割」と題する特集を行なっているが、現在のアメリカと世界の関係について、最も簡潔なサーベイとなっている(“Present at the creation: A survey of America's world role”『エコノミスト』、六月二十九日号)。 これに加え、『フォーリン・アフェアーズ』誌と『フォーリン・ポリシー』誌は、一見したところ全く正反対の主張をしている論を掲載している。こちらの「論争」から紹介してみよう。

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