ネオ・チャイナタウンを東京に作ろう

執筆者:成毛眞2002年8月号

 中国の自治区めぐりをやっている。自治区とは立法権をも含めて少数民族の自治が認められている行政区で、内モンゴル自治区、チベット自治区、広西チワン族自治区、寧夏回族自治区、そして新疆ウイグル自治区の五つ。それぞれ外縁部にちらばり、内外の安全保障の要となる地域である。 チベットや新疆での民族紛争や独立運動なども伝えられるとなると、なにごとも現場主義の僕としては落ち着いていられない。内モンゴル自治区と新疆ウイグル自治区の二カ所を回ってみたが、ジャーナリストになれないことだけは実感した。なにせ旅行そのものを楽しんでしまったからだ。 内モンゴル自治区シリンホト市郊外では民家、とはいってもフェルト製のパオに一週間寝泊りした。満天の星空、緑の地平線、日本人そっくりで人の良いモンゴル人。食べ物が煮ただけの羊の肉であることをのぞけば、すてきなバケーションであった。 新疆ウイグル自治区では辺境都市カシュガル、最西の大都市ウルムチ、平山郁夫でおなじみの敦煌(ここは隣の甘粛省。念のため)などを転々とした。エキゾチックな音楽と食べ物。石だらけの沙漠とオアシス。らくだとターバン。シルクロードは古代から健在だ。 中国辺境といえば、四千年の昔から漢民族が少数民族を武力で支配するというイメージが強い。ところが内モンゴル自治区ではその正反対の光景に驚くことになる。漢民族が一人っ子政策に縛られている一方、少数民族には産児制限が事実上ない。かつて課せられていた羊の所有数制限がなくなったため、裕福にもなった。多くのパオには太陽光発電装置があり、テレビはもちろん四輪駆動の自家用車をもつ者も出てきた。一方の漢民族は、人民公社時代からのおんぼろ工場で営々と働いていた。

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